地方都市の夕景

音楽と写真

フィルムブーム

結婚式の時に写ルンですを大量に買ってゲストに配り、撮影してもらったのだけれど(その写真を元にフォトブックも作った)、その時の余りの写ルンですがまだ残っており、しかし僕は写ルンですの写りがあまり好きではないので、なかなか使い切れなくて困っていた。
結局、レンズを塞いで27回シャッターを切り、フィルムを全部巻き上げ、本体を破壊して中のフィルムを取り出した。フィルムピッカーでベロを出したので、フィルムだけを他のカメラで使うことにする。写ルンですファンに怒られそうな罪深き行為だ。

ここ最近自分の中でフィルムブームなのだけれど、いつも現像に出しているビックカメラの自動補正がここの所どうもおかしくなってしまったようで(或いは大量のデジタル現像をしていく中で自分の眼が肥えてしまった?)、以前よりも色味が転びがちな気がしている。全体的にマゼンタ寄りになる傾向があるような。特に酷いのは、照明が電球色の室内で撮った写真が異様に真っ黄色になってしまうという事象。そしてハイライトが白飛びしがち。シャドウが黒潰れしがち(これらは所謂「フィルム感」なのかもしれないけれど)。結局自分でLightroomで補正しているのだけれど、果たしてこれは僕の仕事なのか…?結局自分で弄ってしまうのなら、最初から普通にデジタルで撮った方が良くないか?などと思い始めてしまっている。こうしてフィルムブームは終焉し、またデジタルに戻る。何枚でも撮れるし、色味も質感もLightroomで思い通りにできるし、と。そして、デジタルのあまりの便利さ、思い通りに行き過ぎて予定調和な感じの写真しか撮れないことに違和感を感じて、またフィルムで撮り始めて…と繰り返していくのがいつものパターン。とりあえず、フィルムの現像は別のお店に出してみることにするか。

フィルムは現像するまでどんな写真が撮れているか分からないし、予想外に良く撮れていたりすることもある。逆に、失敗も多々ある。その「読めなさ」というのがフィルムの醍醐味の一つだろう。しかし、フィルムの方こそ、慎重に撮ろうとしてしまうが故に予定調和な感じの写真しか撮れていないのではないか、とも最近思う。おまけに最近使っているNikon FEというカメラはMFオンリーなのでピント合わせにも時間がかかるし、尚更だ。フィルムで撮りたいなら、使い慣れているCanon EOSkiss5を使った方が良いのかもしれない。AF使えるし、日付も入るし。まぁ、まだNikon FE+Planar1.4/50を使いこなせていないというだけの話かもしれないけれど。不確実性、不安定さ、みたいなものを求めるのなら、Nikon FEの方が良いかもしれない。前回の記事の写真はピントが甘いものが多いけれど、AFが使えるカメラだとああいう写真って意図的に撮ろうとしない限り、逆に撮れないものだったりする。MFオンリー=ゆっくりじっくりピントを合わせて丁寧にシャッターを切る、という使い方をするカメラなのだろうけれど、正直そういうのは向いていない(それ故に二眼レフも手放した)。ただ、このカメラは妻の祖父のものだから、このカメラを使うということに意味があるのだと思って使っている。

中判に憧れてリコーフレックスを買った時もそうだったけれど、中判を使ったからといってそれだけで良い写真が撮れることはなかったし、川内倫子みたいな写真も撮れなかった。結局、そういうことなのではないだろうか。写ルンですを使っても、奥山由之みたいな写真はなかなか撮れないのと同じように。

フィルムで撮ればそれだけで良い写真になるのではないか、などと、甘く考えていたのではないか?よく言われることだけれど、フィルムで撮ってりゃ良いってものではない、写真そのものが良いか悪いかだ。自己満足であってはならない。通常、写真を見る人はフィルムかデジタルかなんて気にしていない。何のレンズを使ったかとかそういうことも。
写真は感性と腕が全てだ。カメラは手段だから、使い易いのを使うのが一番。例えば中判で良い写真を撮っている人たちは、中判を使っているから良い写真なのではなくて、純粋に写真が上手いのだろう。きっと中判に限らずどんな機材を使おうとも上手いのだ。フィルムで撮っているかどうかも関係がない。川島小鳥の写真は、EOS 5DmarkⅣで撮った写真でもやはり川島小鳥感がある。つまりはそういうことなのだろう。

しかし、これは逆のことも言えて、Nikon FEでコンスタントに良い写真が撮れるようになれば、α7Sではもっと良い写真が撮れるようになるのではないか、とも考えられる。最初にフィルムを(大人になってからまた*1)始めたのは、そういう理由からであった。α6000だけではなく、フィルムもやったらもっと上手くなるのではないか、と友人に言われたことがきっかけだった。実際に上手くなったのかどうかは分からない。けれど、例えば少し前に作った妻の写真集(フィルムオンリーのと、デジタルオンリーのと2バージョンある)を見返していると、フィルムで撮った写真の方が良く見える。デジタルで撮った写真の方が色味は鮮やかだし、階調も豊かだ。フィルムの方は粒子が荒いし、ハイライトは白飛びしがち、シャドウは黒潰れしがち。それでも、フィルムで撮った写真の方が温かみや柔らかさがあり、心の琴線に触れる何かがあるような気がする。気がするだけかもしれないけれど。

僕がフィルムを始めてからの短い間にも、フィルムの種類はかなり減ったし、現行のフィルムは値上げされたし、一部のフィルムカメラがやけに高騰したりもしている。(世間の)フィルムブームもいつか必ず終わる。今後、現像代も必ず値上げされる日が来る。やがて、趣味で撮るにはちょっと手が届きづらいような値段になっていき、今では即日上げてくれるネガフィルムの現像も外注になり数日かかるのが当たり前、みたいなことになっていくのだろうと思う。全ては期間限定なのだ。フィルム写真というのは、どう考えても今のうちしか楽しめない遊びだ。だとすれば、今のうちにフィルムを使っておかないと損なのかもしれない。5年後にまたやろうとしても、もうフィルムも売っていなくて、あるいは超高額、そして現像代も倍くらいになっているかもしれない。そもそも現像してくれるところがない、とか。

冷蔵庫にまだ20~30本くらいはフィルムのストックがあって、実のところ最近はストックしていたフィルムを使うことが殆どだから、フィルムを新たに買うということがあまりない。前に自分の中でフィルムブームだった時に「安いうちに買いだめしておこう」と買い込んだものが殆どだ。結果、これは正解だった。気付いたら業務用フィルムのISO400というのは廃盤になっていた(冷蔵庫にまだ10本ある)。ロモも値上がった。今一番安いのは業務用の100か、逆輸入品のC200で1本あたり500円弱。これからさらに値上がるのだろうか?C200の10本セットは買っておくべきかもしれない。

そういえばポジフィルムってクロスプロセス以外では使ったことがないから、経験として1本くらい使ってみても良いかもしれない。ベルビアとか。モノクロもブローニーで1本使った以外使ったことがないので、こちらは何本か買ってみた。

今度はフィルムで作品撮りをしよう。美しいものを撮りたい。

*1:僕が小さい頃はフィルムしかなかった。当たり前のようにフィルムカメラで釣った魚の写真などを撮っていた。現像・プリントも今よりずっと安かった。