地方都市の夕景

音楽と写真

SONIC MANIAに行って来た。


豊洲ピットでのマイブラの来日公演のチケットを取りっぱぐれてしまったので、この機会を逃したら次にマイブラを観れるのは何年後か分からない、もしかするともう二度と観れないかもしれない、ということで、ノリと勢いでソニックマニアに参戦してきた。チケット取ったのはなんと前日。まぁ当日券も出ていたから、余裕だったのだけれど。

仕事終わりの疲れた頭と身体で幕張メッセへ。勿論お目当は伝説のシューゲイザーバンド、マイ・ブラッディ・バレンタイン。それさえ観れれば、他はどうでも良かった。9時半くらいに海浜幕張駅に到着して、本当は持ち込みNGだけれどお酒やお菓子を買い込み、手荷物検査やIDチェックをくぐり抜け入場。この時点で正直、かなり眠かった。しかし、家でちょっと寝てから向かおう、などということをすると、最悪寝過ごしてしまう可能性があったので、多少眠くても開演時間くらいには現地に到着するようにしたかったのだ。

メインステージであるマウンテンステージでは既にコーネリアスが始まっていたけれど、特に興味もないので、チラ聴きして会場内を散策。ソニックステージではクリーン・バンディットが盛り上がっていた。他のステージではよく分からないけどDJがプレイしていた。サイレントディスコという、全員ヘッドフォンで音楽を聴きながら踊る謎の企画があったり、シャボン玉が出てたり、ミラーボールが回っていたり、とフォトスポットを一巡した後、体力温存のためマウンテンステージ後方で休む。渋谷系おじさんが終わり、ナイン・インチ・ネイルズが始まる。これがまた、圧巻のステージだった。何枚かアルバムを聴いたことがある程度のニワカだったのだけれど、イメージしていた以上に熱いロックバンドだった。この時点でも十分な爆音だったので、これから始まるマイブラがどれほどまでの轟音なのか、ちょっと恐ろしかった。一応、バンドをやっていた時に使っていた耳栓は持ってきたのだけれど。

そして時間やや押して午前2時前、ついにシューゲイザー界のカリスマ・伝説のバンド、マイ・ブラッディ・バレンタインが登場。コルム、デビー、ケヴィン、そしてキラキラのドレスに身を纏ったビリンダ、そしてサポートキーボード/ギターの女性の5人編成。1曲目から爆音。普通に音がデカ過ぎる。ボーカルはほぼ聴こえない。左右で爆音ギターがずっとガーーーと鳴っていて、真ん中でドラムとベースが爆音で鳴っているような、音の塊をずっと浴びているような感覚。後ろの方で聴いている限りは、各パートの音がはっきり聴き取れたという話らしいのだけれど、本人たちを肉眼で観たかった僕は割と前の方にいたので、ずっと全ての音がダマになってぶつかってくるような感覚だった。音のバランスがおかしいので、知っている曲でも知っている曲に聴こえなかったり、ステージ背後にずっと映し出される映像が幻想的で綺麗だったり、正にシューゲ界の神の洗礼を浴びるといった雰囲気だった。かなり異様な空間だった。しかし耳栓はなくても大丈夫なレベルではあった。最後の「You made me realize」の間奏、所謂ノイズピットでは、10分ほど爆音のノイズが掻き鳴らされ、鼓膜だけでなく全身が、内臓が震えるほどの爆音の渦の中に飲み込まれていった。飛行機のエンジンの真下にいるかのような半端ない爆音なのにもかかわらず、どこか心地よさを感じられるほどの不思議な空間で、眼を閉じると自分が今どこで何をしているのか分からなくなってしまうくらいだった。子宮の中に戻った感覚、などとよく表現されるけれど、正にそんな感じだった。

…ここはどこだ?僕は今どこで何をしているのだ?

…ああ、そうだった、僕は今マイブラのライブに来ているのだ。眼の前にはあの憧れのバンドの4人がいるのだ。それにしても、この爆音のノイズはなんて気持ちがいいのだろう。心地が良いのだろう。この時間が永遠に続けば良いのに…そんなことを思っていると、唐突にまた曲に戻って、3番のAメロが始まった。そしてあっという間に1時間ほどの演奏が終わる。「Hi」「Hello」「Thank You」殆どそれくらいしか口に出していなかったように思う。寡黙なカリスマバンドだった。爆音ではあるけれど、高音域が耳に刺さって痛い、とかいうことはなかったので、どちらかというと中音域〜低音域がピークになっているように感じた。ここら辺は緻密に計算されたサウンドデザインなのだと思う。ちなみにセットリストは豊洲ピットでの単独公演と殆ど同じだった。単独公演のダイジェストといった雰囲気。あとビリンダは綺麗だった。もう50を過ぎているというのに。そしてギターを弾いていたのは殆どケヴィンだけで、ビリンダはあまりギターを弾いていなかったのが意外だった。

お目当のマイブラが終わったから、もう帰っても良かったのだけれど、時刻は午前3時過ぎ。当然始発まではまだ時間があるから、あと2時間ほど潰さなければならない。皆、そこらへんの床に横になって寝ていた。プラチナチケットを買っていれば、専用ラウンジでゆっくりすることができたのだけれど、生憎僕は通常のチケットだ。皆と同じ様にそこらへんの床に寝転んで時間を潰すしかない。マイブラの余韻に浸りながら始発を待った。仕事終わりのサラリーマンにはオールナイトはつらい。眠い。もう何もする気が起きない。周りの目などどうでも良い。とにかく疲れた。眠い。

帰りの電車の記憶は殆どないけれど、どうにかこうにか家に帰り、夕方まで爆睡した。フェスは楽しいけれど、次の日がつらいよね。せめてオールでなければ…。でもマイブラが観れて良かった。バンドという生き物は、いつどこで活動休止したり解散したりするか分からないから、観れる時に観ておいた方が良い。後悔のない人生を。