地方都市の夕景

音楽と写真

雪が降った。写真を撮らねば。しかし滑って転んでカメラやレンズを破損するのだけは避けたかった。それなら写ルンですiPhoneだけで街の景色を撮りに…とも思ったけど、やはり色々考えると億劫だ。電車はどこも大混乱だから使えないし、歩いて行くのも滑って危ない。このあたりは坂道だらけだし。仕方なく家の周りで少しだけ撮った。ちょっと撮ったら少し満足して、カメラを家に置き、財布だけを持って雪の積もる道を散歩した。まだ誰にも踏まれていない、足首まで埋もれる深さの雪の中をずぶずぶと進んだ。靴が濡れても、靴下が濡れても、ズボンが濡れても構わなかった。東京でこんなに雪が降ることはあまりない。見慣れた景色も今日だけはいつもと違って見える。不思議な感覚だった。今日だけはどんなに冷たくても、どんなに寒くても、どんなに汚れても構わなかった。子供の頃には、地元の街ではもっと雪が降っていたように思う。マンションの外廊下で雪だるまを作ったりしていた。学校で雪合戦もした気がする。授業そっちのけで雪掻きをしていた。子供の頃は楽しさしかなかった雪というもの、大人になると煩わしいだけの存在になってしまう。でも、昨日は少しだけ子供の頃の感覚に戻れたような気がした。そこにあなたも居てくれたら良かったのに。本当は皆子供のままなのに、どうしても大人を演じて生きていかなければならない。そんなもんなんだろう。高円寺に住んでいた頃のことも少し思い出したりした。数年前に雪が降った時のことだ。駅に向かうまでに何回も転んだし、傘は強風で一瞬で壊れたのを覚えている。あの時履いていたブーツは今も履いているし、鞄も今でも使っている。変わらないものと変わりゆくもの。記憶が錯綜してきて話の芯が見えなくなってきたのでここまでで。